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「むう・・・」 「どした柊―?また体重が増えたのか?」 私はできる限り目を鋭くして日下部を睨みつける。ひっ、と小動物の様に峰岸のもとへ。 手元にある1枚の紙。健康診断表よりも、電気代請求書よりも今の私には酷な物だ。 全く情けないにもほどがある。こんな紙切れ1枚ごときに悩まされるとは。 整列した数字を、アルファベットが統率し私を寄ってたかっていじめている。 いい度胸だ。破り捨ててやろうか?そんな考えも一瞬だけ。捨てられない理由がある。 「どうしたの?柊ちゃん。良かったら相談に乗るよ?」 まるで菩薩の様な峰岸の笑顔。ああ、なんだか癒される。後ろで私を馬鹿にしたような顔の日下部が本当に馬鹿みたいだ。 「うん・・・えっとね・・・」 「かがみ様―!」 なんてタイミングが悪いんだろう。せかせかと私の近くに歩み寄る悩みの種。その名も。 「泉こなた、やりましたっ!見てください、かがみ様。9月の模試、E判定からC判定になりました!」 おぉ、と日下部、峰岸から感嘆の声。その前に私の呼び名に突っ込んでほしい。 「すごいわ泉ちゃん。目覚ましい成長ね。」 「やるじゃねーかチビッ子のくせに・・・アタシだってやれば・・・」 「ふふ、甘いなみさきち。やっているとやればには天と地ほどの差があるのだよ。」 今度は私が感嘆する番。こいつからこんな言葉が出るとは。 今までのこなたから出た言葉なら驚かない。むしろ溜息をつきながら突っ込みを入れる。 だけど今、この私たちが悩みながら生きる現実にいるこなたの口から出ているから私は突っ込まない。 本当にこいつは、泉こなたは力強く歩いている。迷わず、立ち止まらず。 「・・・様?」 背が伸びた、体重が増えた、筋肉がついた。そんなレベルの成長じゃない。 猛勉強を始めて成績が伸びたのは勿論だけど、そういう意味での成長でもない。 「・・みん?」 強いて言うなら人として成長した、そんな感じだと思う。 「うりゃー!くらえかがみん!」 「ひゃあっ!こ、こら!どこ触ってんのよ!?」 「・・・かがみ様ったら私が傍にいるのに他の人のこと考えていらっしゃるんだもの。」 前言撤回したくなる。やはりこのバカは根本的には変わってない。断言できる。 ざわざわと賑やかになる教室。勿論話のネタはこなたが原因なわけで。 「そ、そんな関係だったのか・・・柊ぃ・・・」 「恋愛の形は様々よ?みさちゃん一緒に応援しよ?」 「ち、違うわよ!!このバカ!あんたもなんか言いなさいよ!!」 こんな毎日、こんな日常。普通の人から見たらどうなんでしょうか? 私?私の答えは簡単。楽しいに決まっている。慣れても慣れない楽しさ。そんな感覚。 でもそんな単純に世界は回ってないんだよね。 そんな哲学者みたいなことを、笑っているこなたを見ながら考えていた。 ☆☆☆☆ ザワザワと賑やかな夕暮れ時の喧噪。道行く人々の足音。ざわつく私の心。 それらとは対照的な空。紅色に染まり、幻想的で、穏やかな光景。 目を閉じてみると分かる秋の空気。少し冷たくて、澄んでいて。 溶けてしまいたい。この空に、この空気に。でもそんな事は不可能。不可能だから願うのかもしれない。 ドン。不意に鈍い衝撃を受け、私の体は地面に崩れる。 「いたっ・・・」 私にぶつかったスーツ姿の男性は私を気にかけることもなく、歩き去ってゆく。 アパートまでの帰り道に通るこの商店街。行きかう人々は数知れず。ボーっとしていた私が悪かった。でも。 「何よもう・・・謝るくらい、してもいいじゃない・・・」 ふと思う。あのサラリーマンにとって、私は、柊かがみはこの行きかう人々の何分の1なのだろう。 出会ってきた、関わってきた人の何分の1なのだろう。 商店街をみる。美しく紅。でもどこか無機質で、どこか機械的で。それを感じさせるのはきっと数え切れないほどの人々だ。 少し、酔った。すれ違う、溢れる人々とちっぽけな自分を意識したからだろうな。 深呼吸をした。そしてまた私はアパートへ歩き出す。無機質な、機械的な世界に溶けてゆく。 「もしもし・・・はい・・・・」 「あはははは!マジでー!?」 「でさ、あいつがうざくってさー・・・」 拒みたくても入ってくる音。この世界を奏でるこの音が、私の思いを加速させる。 「あーもう・・・やだ・・・」 どうしてこんなにちっぽけなんだろう。足掻いても足掻いても、ちっぽけな私。 鞄から1枚の紙切れを出す。数字とアルファベットの羅列。私に悩みを植え付けたモノ。 7、8、9月と変わらない、むしろ下がり気味の数値。救いなのはかろうじて維持しているBの文字。 努力しても形にならない私に、私は憤りを感じていた。こんなちっぽけな数値と文字達に振り回され、自分を見失いそうな私に、怒りを感じていた。 でも、私自身に感じる感情と同じ、それ以上の何かを感じていた。よく自分でも分からない何かを。 ふと気がつくとあの世界から外れた見慣れた私のアパート。夕焼けに映えていた。 荒波立てていた私の心が落ち着いてゆく。不思議だ。いや単純だ私は。 コツコツと階段を昇りながら想像する。 『やふーかがみん、あそぼーよー!』 『このアニメ見てよー。すごく面白いからさ。』 ふふ。自然に笑みがこぼれる。全くあいつは。そんな事を考えながら、ドアを開ける。 「ただい・・・」 ああ、そうか。机に向かっているこなたを見て、何かが分かった気がする。 それは切なさ。いつかこなたが。 「あ、おかえりかがみ。今丁度休憩にしようと思ってたんだ。」 こなたがどこかに行ってしまいそうで。 私が行けないような高みに行ってしまいそうで。 ☆☆☆☆ 決して今までこなたを卑下して見ていたわけじゃない。ただ強く思い込んでいただけ。 人間が、雪は白いものだと、空は蒼いものだと、海は青いものだと信じている様なもの。 でもそれらは何故そう思われているのか、と考え込んでみる。 解答。それはそう見えるからである。己の目で見たものを己の脳に刻みつけ、確信しているからなのだ。 でも真実は?目で見えるものが全てなら、食の偽造やら、汚職行為やらなんて問題にすら上がらないよね。 もしかしたら真実は真逆だったり。雪は黒で、空は紅で、海は赤色かもしれない。 そんなことありえないよ。そんな事が言えるやつは私がその考えを正してやりたい。 出来ることなら2か月のこなたと、今のこなたを見せてやりたい。そんでもって目が飛び出るという古典的なリアクションを見せて欲しい。 決してこなたを卑下しているわけではない。ううん、むしろ尊敬すらしている。 だからこそ、今の私は私じゃないんだ。 「・・・はあ・・・」 目の前にいるしょぼくれた私が霞んでゆく。そして完全に見えなくなる。 ずっと、対等でいたと思っていた。私の唯一、こなたを補っていけるものが勉強。 2年前、同居する時、私は互いに足りないものを補って生活しようと言った。 でも補ってもらっていたのは、私ばっかりだった。 こなたは掃除も、洗濯も、料理も何でもできた。唯一の弱点が早起きと勉強だけ。 実際にはもっと弱点があるはず。でも私には眩しすぎて、粗探しする程、目が開けられなかった。 「・・・ふう・・・」 口から出た温かいため息のせいで、またしょぼくれた私が顔を出した。 今の私は全然眩しくない。ボロボロと砂山が削れるように、私が崩れてゆく。 『かがみ、私と一緒に住んでくれて、傍にいてくれてありがとう』 この世がもっと単純だったらいいのに。そんな下らないことを考える。 この言葉は、真実なのだろうか。 馬鹿みたいだ。大切な、無くしたくない人の言葉を疑うなんて。 「・・・もう・・・」 ばしゃ、と勢いよく水を目の前に映るしょぼくれた私にかける。すると。 「かがみ、お背中流しに参りました。」 そう。何を隠そう此処はお風呂場。風呂場で悩みこむ私ははたから見たら滑稽だろうな。 鏡に映った私も、そしてわけのわからないセリフを吐く悩みの種ももちろん、裸なわけで。 「・・・どこから突っ込めばいい?」 「んー私がスク水じゃないところからかな?」 ☆☆☆☆ 「いやね、かがみ疲れてそうだからさ。それに裸の付き合いも大事だよ?」 「だからってさー・・・は、恥ずかしいわよ・・・ってどこ触ってんのよ!?」 「手が滑った。」 「真顔でいうな!てゆうかそんなお約束いらんわ!」 実際、こんな状況になるなんて微塵も思っておりませんでした。さすがこなたさん。 驚きと呆れのあまり、小馬鹿にする言葉すら出ません。 「ったくもー・・・」 「まぁよいではないか。はっはっはー。」 はっはっはー、じゃない。こっちは死ぬほど恥ずかしい。 「それにしてもかがみの胸は結構あ・・・」 「う、うるさーい!!それ以上言うと・・・」 「それ以上言うと?」 「っ・・・さ、さっさと出ちゃうわよ・・・」 「・・・」 「な、何よ!?」 「・・・素で可愛いなかがみん・・・ずーるーいー!」 「うううるさぁーい!」 駄々っ子のような、甘える子供のようなこなたの表情。なにかが溶けてゆくような感覚。 やっぱり、補ってもらっているのは、依存しているのは私の方だ。 助けていたつもりがいつの間にか、助けられていて。 必要とされたかったのがいつの間にか、必要としていて。 隣にいたつもりが、いつの間にか、遠くにいて。 きっと、勉強も私に教えてもらう必要もなくなるだろうな。勿論、私がまだ眠そうなこなたを起こす必要もなくなる。 そしたら、もう、ここに私の居場所は無くなる。こなたの隣は私の特等席じゃなくなる。 もっと凄い女の子かな。もしかしたらカッコイイ男の人かも。 「くらえかがみ!」 「ひゃっ!ははは・・・くすぐったいよ、ん・・あははは!」 ここがお風呂でよかった。こなたとじゃれ合えていてよかった。涙が、ばれないから。 「ね、かがみ?」 「・・・ん?何、こなた?」 最初見たときは、私の涙のせいで幻覚が見えたのかと思った。 何度か瞬きをして、これは幻覚でも何でもない、現実、真実なんだと分かった。 「ありがとね、かがみ。」 こなたの目の端には、涙があった。 ☆☆☆☆ 「かがみのおかげで、私は・・・なんていうか、成長できた、と思う。 もし2年前、同居しよってかがみが誘ってくれなかったら、今の私はないよ。 ここまで、勉強を頑張ろうなんて思わなかったし。」 世の中がもっと単純ならいいのに。こなたの言葉が理解しにくい。 頭の中になにかノイズがかかっているみたい。大切なこと、伝えてくれているのに。でも。 「今は、アニメよりも、ゲームよりも、一人の時間よりも、大切なものがある。 無くしたくなくて、必要で、隣にいてほしい存在があるんだ。 そんなことも胸を張って言えるよ。ちょっとエロゲの主人公みたいだけど。」 何だろうこの感覚。不思議だ。頭がぼーっとする。湯あたりではない。 こなたの言葉を理解できない。でも、こなたの意思は理解できる。本当に不思議だ。 「ね、かがみ、2回目はないからよく聞いてね。」 もう分かる。言わなくても分かるよ。 もしかしたら、私は空になっているのかもしれない。 水蒸気、酸素、二酸化炭素、命、想いが溶けるあの空に。 なりたいと思えるからなれるのかもしれない。単純だなこの世界は。 だったら、なりたいものがあるんだ。空よりもなりたいものがあるんだ。 「――――。」 私は戻ってゆく。空から複雑で、混沌として、難しい人間に。 こなたは笑ってる。無邪気で、凛としていて、少し恥ずかしそうな美しい笑顔。さっきの涙は水滴だったのかな?ううん。いまはそんなこと、どうでもいい。 目の前にある笑顔が全てだから。この瞬間、人間でよかったと思ったんだ。 やっぱり人間はちっぽけじゃない。だって。 こんなに笑顔が美しいから。たった60憶分の1でも美しい輝きだから。 笑顔一つで、崩れかけた人間を救えるから。 大したことない日常でも、他人を強くさせられるから。 「湯冷めする前にでようか、かがみ。」 「そだね。」 「んーお風呂っていいね。」 「めんどくさがりが何をいうか。」 「かがみの裸が見れ・・・」 「もういい・・・」 ふと鏡が目に入った。かがみには自分でもビックリするような綺麗な自分。 私はなりたい。雨に負けても、風にも負けても、数字の羅列に挫けてもいい。 ただ、こなたの隣にいれるような人間になりたい。そしてこなたと同じ言葉を言いたい。 『無くしたくなくて、必要で、隣にいてほしい存在がある。それが貴女。 これからもずっと一緒にいてください。ずっと、ずっと。』 そのために、今は試験と戦おう。柊かがみ。頑張ります。まっすぐひたすらに。 11話 Correct answerへ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b 人任せだが有志殿よ、いつか漫画にしてくれ -- 名無しさん (2023-01-04 21 41 41) 支え合い助け合ってこそ「人」というモノなんでしょうね。 ましてや相思相愛な二人ですもの。 不安も苦しみも一人では背負いきれなくても2人なら半分づつ持ち合えばいい。 急ぐ必要も焦る必要もないでしょう。 こなたもかがみも例え相手を追いこしてもまた再び列び合える様にお互いを待ち続けることが出来るのですから。 良作を有り難う御座いました。 -- こなかがは正義ッ (2009-04-14 02 10 12) 正にスバラシキセカイ!GJ! これを第二期として放送して欲しいわー -- 名無しさん (2009-04-12 07 47 15) ひだまりと、らき☆すたを足した感じですね -- 名無しさん (2008-12-24 23 08 01) こなたとかがみの感情がうまく表現されていて素晴らしかったです。 続き気になりますww -- 名無しさん (2008-10-21 00 57 24) 頑張れかがみ、あと一歩で大人だよ。 柄にもなく、そんな事を思ってしまった。 それにしても表現捻りに捻るよなぁ。そこだけチト気になった。 最近の流行かな? -- 名無しさん (2008-07-15 22 08 21) 挫折しているかがみがこなたによってまた立ち上がるこの 一連の描写には、とても引き込まれるものがありました。 本当にすばらしいです。 -- 名無しさん (2008-07-14 01 27 04)
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P.M.7 00。家のインターホンが鳴った。 「こんばんは、柊かがみです……ってアンタと妹だけだったわね。かがみよ。開けて」 ドアホンからきっちりした声が聞こえてくる。名乗った通りかがみだ。 「おう、ちょっと待ってくれ。」 俺はそう言うとドアホンを切って、すぐさま玄関に向かい扉を開けた。 「おぅ、すまんな。」 「いいわよ別に。」 「あーかがみんだー!」 妹が後ろから俺の脇を潜ってかがみの元へ向かう。 「おっ妹ちゃんじゃない。相変わらず元気そうね」 左手にスーパーの袋を持っている為、右手で妹の頭を撫でるかがみ。 黒のオーバーニーに肌色のミニスカ。薄着のシャツの上にパーカー付きの上着だ。 なんとも似合ってる。 「綺麗、だな。」 フッと笑って言ってやった。 「な、何言ってるのよ。私が綺麗なワケないじゃない。」 「着こなしてる、って言った方が良かったのか?」 「それも変わらないでしょ。でもまぁ、うん、ありがと。」 目線を外しながら…少々顔が赤いか?かがみは言う。 「かがみんどーしたのー?熱ー?」 「ん、別に。そんな事ないわ。大丈夫よ。」 かがみは、妹の心配を撥ね退ける。本当に大丈夫なのかね。 おっと、流石に女子に荷物持ちを託すワケにもいかねぇな。 「かがみ、それ材料か?わざわざ買って来てくれたのか。ありがとうな」 右手でかがみの左手にあるビニールの持ち手に触れ、受け渡される。 「もしキョンのところにある材料で足りなかったら嫌だからね。もう買っちゃおうと思って。」 中々重い。流石は こなた称 で男勝りのかがみだ。 「……キョン、あんた私のコトそう思って……?」 …もしかして俺 「喋ってたわよ。……気をつけなさいよ。」 無言の重圧を浴びてしまった。すまんかがみ。悪気は無いんだ。 「と、とりあえず、家に入れよ。疲れただろ、こんな重いモン持って。」 「あ、そうね。お邪魔します。」 「まぁまぁ狭いトコロだけどどうぞー♪」 妹よ、そういう発言は自分が 下る 時にする発言だ。事実ではあるが。 おっと、言い忘れていた。 何故かがみがウチの家に来たかと言うと、晩飯を作りに来てくれたからだ。 更に今日は俺の両親がいないからだ。かがみが買ってくれたのはその材料である。 学校で談笑の中でその事を呟くと、かがみが率先して「じゃあ私がキョンの家の晩御飯作ってあげるわ。」と言い出したのがきっかけ。 今日は何をデリバリーしようと考えていた俺としては有難い限りだ。拒まず俺は感謝した。 そして、「じゃあ夜7時に行くわね」と言って終わった。そして、ぴったり来た。 かがみのコトだ。家の前で7時まで待ってたんじゃないのか…? 「あまり、期待はしないでね?」 ボーッとしてたからかがみの声で我に返った。 期待しない、ってそんなワケないじゃないか。かがみの晩飯だ。貴重なモンだ。 「バカ、本当に期待しないでよ。しょーもないものよ」 それでもまともに晩飯作れない俺から見れば充分だぞ。 「ん…ありがと。」 さっと台所に向かって行ってしまった。 おっと、そういや台所放置してたな。 「すまん、かがみ。ちょっと待っててくれ。台所汚いままだ。」 俺は、金魚のフンのように台所に向かう。 「アンタ…客人が来てるのにそれはないでしょ。」 溜息吐かれた。ご尤もだ。 「悪い。ちょっとリビングにでも行っててくれ。5分あれば終わる。」 「いいわよ、5分くらいなら買い出した材料纏めておくわ。」 「…本当にスマン」 「いいって。」 兎に角、俺はかがみのエプロンすがt……否!手料理を食う為に手早く台所掃除に取り掛かった。 同時進行でかがみが後ろで屈みながらビニール袋から材料を取り出す。 流石に後ろで「人参とー…」とか甘ったるい声で囁くかのように呟かれていると気になる。 皿を磨いてる時は後ろを向かせて貰った。誰にも許可は取ってはないが。 かがみが床に材料を置いていく。 人参に―…玉葱。それにウィンナーとキャベツにピーマン。それに豚肉か。 「かがみ、何を作ってくれるんだ?」 古泉のようなスマイルでかがみに聞いてみた。 「んー…野菜炒め。後味噌汁とか………」 作業で忙しいのか質問を受け流すような返答の仕方だった。 野菜炒めか。実にシンプルで申し分無い。 「あ゛っ!」 かがみが飛び上がった。 「どうした?」 「………もしかして今、私晩ご飯のメニュー言った?」 ん、言ったぞ。それがどうした。 「………ん、何でもない……」 そうよねいずれ解るんだし…、とかなにやら後から独り言言ってたがどうしたんだろうか。 「あ、そんくらいやってくれればいいわよ。ありがと。」 その30秒後、俺は後ろも向かずに皿洗いしてた横からぬっとかがみが顔を出してきた。 「エプロンとか、ある?」 ああ、それならお袋ので良かったら。 台所の壁にかけてある質素というか、紺系のラインが入ったエプロンをかがみに渡す。 「ありがと」 かがみは慣れた手つきでエプロンを着用して、紐を後ろで留める。 「ん、それじゃあいいわよ。宿題でもしときなさい。」 と、冷たくあしらって来た。 しかし、それではかがみに頼んだのではなく 使って る。そんな感覚になっちまう。 「いや、手伝わせてくれ。やって貰ってばっかじゃ何か罪悪感に苛まれる。」 「そう?私はいいんだけど。言い出しっぺだし。手伝ってくれるなら―…材料切るの手伝って。 了解した。イエッサー。 「 Yes,sir. は男に使う言葉よ。女になら Yes,ma am だったと思うけど……意識して使ってるんじゃ…ないでしょうね?」 む、それは知らなかった。すまん。 ていうか、包丁向けないでくれ、な?さっき 男勝り って言ったからって… 「キョーン~?もう1度言ってくれるかしらー?」 自重する。すまん。今度一切言わない。誓う。誓約書でも書こうか。 「そこまでしなくていいわよ。」 あっさり機嫌を戻した。嫌われてるわけじゃなさそうだ。 とりあえず俺はもう1本包丁を取り出し、かがみが半分に切った人参を切っていった。千切りっていうのか? 「とりあえずはこんなもんか。」 5,6分もすると全ての材料は原型を留めず炒められるだけの存在になってしまった。 「……にしてもかがみ、大丈夫か?」 因みにかがみは、というと。 「う、うん…。」 目に涙を浮かべて苦しんでいた。 泣かせた奴は誰だ?俺じゃないぞ。人じゃないぞ。 そう、解ってたかも知れないが玉葱だ。 人参を切り終えた後、俺はかがみにウィンナーを切るように命じられた。 その時に、かがみは玉葱を切っていたのだ。 俺は淡々とウィンナーを3mm程度に切っていた。 すると、横から鼻を啜る音が聞こえて来た。 周辺視野でかがみの方を見ると、包丁を持たないかがみ右手がかがみの顔に何度も行っていた。 不思議に思い、直接見ると、涙が頬を伝っていた。 「お、おいかがみ…どうしたんだ?」 聞かなくても玉葱切ってる時点で何となく予想はついたんだが。 「う……大丈夫……」 とは、言葉では強がっていたが、目は相当染みて痛いのだろう。だんだん右手が顔に行く回数が増える。 「ほら、目痛いなら顔洗って少し離れとけ。回復してからまた働いてくれよ。」 タオルを渡し、水道の栓を捻って水を出してやる。かがみは水を汲み、顔を何回も洗う。 「ご…ゴメン……それじゃちょっと……」 「おう、やっといてやる。」 つーわけで現在に至る。 「ありがと……っていうか恥ずかしいトコロを…」 「気にするな。こなた的に言わせて貰うと 萌え要素 じゃないのか?」 「うっ煩いな!」 タオルをペシッと投げつけてきた。 「もう、要らないんだな。」 顔についたタオルを剥がす。 「……大丈夫よ…ありがと。」 「それじゃ、この後はかがみシェフにお任せ致しますどうぞ~」 と言い残し、俺はタオルを持って台所を出た。 「そこまでいいもの作れないって何度……はぁ。」 かがみはそう言うと黙々と調理を始めた。 「お、いい匂いするな。」 ソースでいい具合に焼けた肉と野菜の匂いが香る。 おおよそ3分後、俺は戻って来た。 その間何をしていたかというと、タオルを洗濯籠に持って行くついでに洗濯物洗ってた。 ずっと台所にいても邪魔だろうしな。 んで、洗濯機にかけてる間戻って来てるワケだ。 「ちょっと焼き過ぎたかも知れないけどね…」 アハハ、と笑いながらかがみはフライパンを片手で持ち上げ調理箸で具を混ぜる。 「ちょっとだけ、食べる?」 フライパンをコンロに置き、火を止め、箸で肉を挟み俺の前に持って来る。 「はい、あ~ん」 有無を言わさず、にっこりと笑ってくる。畜生、断れないじゃないか。断る気もないが。 言われるがまま、俺は口を開き、箸ごと肉を入れる。 「…は…あつっ!~~~ん、美味い。」 「ほんとっ!?」 「嘘で言うかよ。いい具合に味が出来てるぞ。」 味付けのコショウやソースが上手に絡まってる。飯が進みそうだ。 「…あ、ご飯炊いてないや…」 忘れてた。かがみに頼りっ放しだったからやっちまった。 「やっといたわよ。3合でよかった?」 なんというかがみ。俺に出来ないコトをやってのけるそこにシビれるあこgゴンッ 「何言ってんのよ。」 顔を赤くしてグーパンしてきた…いっつ… そんなやりとりしてると、フライパンの横にある鍋が沸騰し始めた。 「あっ、キョン!ざるに入れた玉葱持ってきて!」 味噌汁作ってたのか。盲点だった。 叩かれた部分を擦りながら玉葱をかがみのトコロへ持って行く。 「んじゃあ、お湯が跳ねないように入れといてー」 と言い残し、俺の家の冷蔵庫から味噌を持って来た。 「流石に我が家の味噌とかあるからね。高いし。貰うわよ。」 どうぞ。かがみは味噌をスプーンでおたまに少量掬う。 グツグツと玉葱入り湯が更に熱される。 「そろそろかしら。」 そう言うと、味噌の入ったおたまで茹でられた湯を掬い、箸で溶いていく。 溶いて、もう1度湯に入れる。繰り返された。 繰り返される度に玉葱しか入ってない透明色の湯は、オレンジより濃い色の 味噌汁 になった。 さらにしばらく置いてから、かがみはおたまで味噌汁を掬い、小さい皿に乗せて味噌汁を味見した。 「んー……濃い、のかなぁ…わからないわね…」 1回掬っただけの味噌汁を口の中で賞味し捲ってるのだろう。困った顔をしている。 「…ねぇキョン。このくらいでいいのかしら?」 同じ皿に今度は俺の分を入れて渡して来る。 皿に口を付けて、次は冷ましながらゆっくりと、飲んだ。 ……正直俺にもよくわからんわけだが。かがみでわからんのに俺にわかるか?わかる筈も無し。 「……こんなもんじゃないか?俺もわからん。」 「んーそっかー。んじゃあこんなもんで。」 カチッとガスを止める。味噌汁が沸騰しなくなる。 「んじゃあ、お皿取ってちょうだい。入れるから。あ、お椀とね。」 とりあえず7時半もとっくに回ってるので、俺は手早く真っ白な花がポイントされてる皿とお椀とガラスのコップ3セットを取り出す。 かがみは出来上がった料理をテキパキと皿に入れてるので、俺は味噌汁を注いだ。 「キョン、余るから少し多めにしてるわよ。」 構わんが。それにしてもかがみの皿に盛られた量…少なくないか? 「そ、そんなことないわよ?」 少し声が裏返ってるぞ。 「気のせいよ。」 そうか?まぁいいんだが。 …ははぁん、さてはダイエッtぐわっ! 「気・の・せ・い・ね?」 ニッコリ笑顔だが、怒りマークを頭につけてるかのような表情で、脇腹殴って来やがった… 「は、はい…、それじゃ俺は皿をテーブルに配って行かせて頂きます……」 「よろしく♪私はちょっとトイレに行って来るわ。」 そういってかがみはエプロンを壁に丁寧に掛け直し、台所を後にした。 その間に俺は脇腹から発する痛みを抑え込みながら、皿とお椀とコップをテーブルに置いていく。 ちょっとやりきった感になっていると、白色が夕飯に足りないコトを思い出す。 「おっと、飯だ飯。」 すっかり忘れてたぜ。 俺はすぐさま純白のお椀を食器棚から取り出し、ちゃちゃっと入れてテーブルへと行く。 「ありがと。」 「わーいばんごはーん♪」 ご飯入れてる間にかがみと妹は既に椅子に座っていたようだ。 ご飯を入れたお椀を3ヶ所に置いて、俺はかがみと妹の向かい側に座った。 「それじゃ」 かがみが音頭を取る。 「いっただっきまーす!」 俺のゆっくりした声を掻き消して妹が乗ってしまった。まぁいいか。 箸をとってご飯の椀を手に取り食おうとしたらかがみが手を動かさず、妹の顔を見ていた。 「どうしt……」 心配になって言おうとしたがなんとなく、解った。 俺も子供の頃に母さんから料理を教わったコトがある。 夏休みの宿題か何かで強制的に晩飯一食の調理だった。 母親に教えられながらも、洗う、切る、炒めるまで全てやった。 その後、家族が揃ってる中で晩飯を食った。 その時、俺は多分今のかがみみたいなコトをしていただろう。いや、していたに違いない。 妹も箸を取って、玉葱と人参を挟んで口に、入れ、た。 昔の俺も、今のかがみも求めたモノは1つだけだ 「おいしー!」 そうだ、その一言だ。 かがみはほっと溜め息を吐いて、やっと箸を手にした。 「…? キョン、どうしたの?ニヤけてると気持ち悪いわよ。」 言われて気付いた。ニヤけてたのか。 ソースを口につけて笑う妹を無視して、俺も食事に入った。 俺は淡々と、さっき試食した野菜炒めの味を食した。やはり白飯がよく進むな。 食事中は、かがみと妹でお互いの学校の話をしていた。 ああ、こうなって妹の学校生活を聞くともう1度小学生に戻ってみたいもんだ。 妹は逆のようだ。高校生になって俺達みたいに自由になりたいらしい。 だがな、妹よ。真の自由は小学生までなんだぞ。 俺はそのコトをじっくり諭してやりながらご飯2杯目にありついた。 因みに、その諭した結果は皆無だ。 「ごっちそーさまー!」 「ご馳走様でした。」 「ごちそーさん。」 3人ともしっかり食い残し無く食べきれたところで晩餐会は終わった。 ピーマン嫌いの妹がピーマンまでも空にしていたコトには驚いた。 「あ、下味っていうの?ちょっとピーマンの風味消してみたのよ。」 皿洗いしながらかがみは解説してくれた。 どうやら、ピーマンを他の野菜より小さく切って、後は塩コショウやら何やらでやってみたらしい。 しかし、かがみ。失礼だが、見直したぞ。料理もしっかり出来たんだな。 笑って褒めてやると、かがみは皿をスポンジで擦りながら後頭部を向けて来る。 「…………つかさが教えてくれたんだけどね。」 正直だ。だが、教えてくれただけだろ。 「まぁ、そうだけど。」 「調理したのはかがみだし、そのピーマンのやつもお前がやったんだ。それは充分かがみの力だ。自信持てよ。」 「あ、ありがと…、あ、はい。皿。」 目を見て言ってやると顔を赤らめていた。 それから皿を洗い終えるまで、かがみは終始無言だった。 心成しか、耳が赤かった。 「んじゃ、そろそろ帰るわね。」 時刻は8時半。楽しい時はあっという間に過ぎるな。 かがみは、1人で先々と玄関に足を進ませる。 「お、ちょっと待て。こんな暗い中じゃ危ないだろ。送ってやるよ。」 「別にいいわよ?そこまで気使わなくても。」 「いや、使わせてくれよ。晩飯作ってくれたのもあるし。」 「あ、んじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。ありがと。」 ちゃちゃっと俺は携帯をジーパンのポケットに入れて、靴を履く。 「えー、かがみん帰っちゃうのー?」 妹がリビングから出て来た。 「うん、ごめんね。また来るから。」 「約束だよっ!」 妹は、足に合わないハズの俺のサンダルを履くと俺を追い越してかがみと指切りげんまんをする。 「うん、来るわ。今度はハルヒ達と一緒にトランプとかしましょ。」 妹の顔が晴れやかになる。かがみは保育園の先生に向いてるのかもな。 「お待たせ。んじゃあ妹は留守番頼むな。」 かがみと俺は、自転車と一緒に並び歩く。 「はーい、またねーかがみーん!」 近所迷惑おばさんになりかけるかのような大声で妹はかがみを見送った。俺はオマケだ。解ってるさ。 自転車に跨り、走らせた。 「かがみって可愛いところあるよな。」 唐突にこんなコトを言ってしまった。 さっきの妹の顔を見て、評価を待ってるのを思い出したからだ。 「へっ、きゅ、急に何よ//」 「いや、ふと思っただけだ。いちいち照れると噛むところとか、な。」 「う、煩いな……///」 もしかしたら自転車に乗ってなかったらまた殴られてたかもな。 何故か爽やかに笑えてしまった。 しばしの沈黙。今日の飯のコトを振り返っていた。 「あ、そうだ。なぁかがみ」 大事な疑問点が抜けていた。 「何よ」 振り向いてくれたは良いが、急につっけんどんだな。 「調理する前にさ、俺が 晩飯何だ? って聞いただろ?」 「うん?…ああ、聞いたわね。」 「あの時、 野菜炒めと味噌汁 って答えてから何か後悔してなかったか?」 「後悔…?」 顔を前に戻して、かがみは数秒の間考えていた。 「………あ~~~~…」 思い出してくれたようだ。 「あれ、何で後悔したんだ?教えてほしいんだが。」 「………笑わないでよ?」 多分な。 「料理する前からそんな質素なモノを作るって言ったら、嫌、だと、思った、から……」 唖然とした。 「………はっ、はははは。アハハハハハ!」 「だから笑うなって言ってるでしょうが!///」 もう、何とも言えないぞ。笑いが止まらん。 「アハハハ!か、かがみ。俺はマトモに作ってくれたモンに対して文句なんて言えないぞ。立場も無いしな。 友人が作ってくれたなら尚更だ。有難く頂くし、今日の晩飯も充分美味かったさ! 自信持てよ、かがみ。自分で嫌悪してるだけだぞ。」 「ほ…ほんと?」 「ああ、本当だ。別に不満なんて一欠片も無かったさ。」 寧ろ、マジで不満出すやつは俺がシメるさ。かがみの飯は美味い!異論は認めん。 「な、だからさ。自信持て。」 「う、うん。キョン、ありがと!」 今日一番の笑顔を見せてくれた。晴天の下ならもっと映えてたんだろうな。勿体無い。 ピロリロリ、ピロリロリ。 携帯が鳴った。俺のでは無い。っつーことは 「あ、私だ。ゴメン。」 かがみだった。 人通りも車通りもほとんど無い、街灯の下で自転車を止めて、かがみは携帯を見つめる。 「えーっと、メールの番号は――っと…あ、お姉ちゃんからだ。」 かがみのぼやきを聞きながら、俺は街灯の近くを飛んでる羽虫をただ何となく見ていると。 「あ~~~~っ!!!」 先程の見送る妹の声に負けず劣らず。かがみが大声を出した。 まだそこまで暗くなくてよかった。周囲の家にあまり反応は無い。 「か、かがみ。どうした?」 「ごめんキョン!早く帰らないと!ちゃんと帰れたらメールするから!それじゃ!!」 「あ、おう。」 早口でそう言うと、かがみは自転車の出せる最高速でシャーッと帰っていった。 「…どした?」 街灯の下、独り虚しく自転車に乗ってるのも気分が良いものじゃない。俺はすぐ帰った。 「ふぃー、只今。」 家に帰って、まだ夕飯の匂いが残っているコトを実感する。 「おっかえりー!お風呂入ってよー!」 麦茶を飲む為に、リビング経由で台所へ行くと、バスタオル頭に妹がソファにいた。 「りょーかいー」 流し返事。 食器棚から新たなコップを取り出して、冷蔵庫から麦茶の入ったボトルを出して注ぐ。 タッタタンタ!タンタタッタタッタタンタタンターン。 聞き慣れた携帯の音が鳴る。俺のか。 携帯を見ると、かがみから到着メールだった。 『今日はありがと。急いで帰ってゴメンね。』と届いた。 「 ま・た・く・い・た・い・ぜ っと。」 『感謝するのはコッチだ。こんな機会があったらまた食いたいぜ。』と返して、俺は風呂に入って、床に就いた。 次の日、いつもと何ら変わらぬ感じでかがみとは教室で会った。 いつものメンツで昼飯食ってると、かがみとつかさの弁当が何となく力入ってた。 「今日はおねーちゃんが作るって言い出してね。1つ食べてみる?」 えへへ、と笑いながらつかさが自分の弁当から卵焼きを俺に渡してくれた。口に運ぶ。 「ん、美味い。」 それだけ言った。 その時、みんなの視線は一時的な評論家の俺に言ってたが、かがみの表情が嬉しそうだったのは見逃さなかった。 ――アフターディナー―― P.M.8 45 「ぜぇぜぇ……只今。」 私は、帰って来た。急いで帰って来た。肩で呼吸してた。 「あ、お姉ちゃんお帰りー」 つかさが笑顔で迎えに来てくれたが……、 「つ・か・さ?」 「え、何、お姉ちゃんどーした…ふぇぇぇえ…」 怒りが溜まりつつある私は、つかさの頬を横に抓ってやる。 「あんた、ねぇ…まぁた余計なコトを……」 「へっ、ほひかひて、はつりほへーひゃんひ…」(へっ、もしかして、まつりおねーちゃんに…) そのもしかして、よ。 「あーお帰りー。楽しかったー?」 ニヤニヤ顔でメール送信者、まつりお姉ちゃんが迎えに、来た。 「言っとくけど、違うからね!」 「な、に、がー?私何も言ってないよー?」 お姉ちゃんのニヤニヤが止まらない。正直腹立つ。 「このメールは何よ!!」 つかさから手を離して、携帯を突き出す。 メール内容はこうだった。 『いつまでカレシのトコロにいるのー?(ニヤニヤ顔 もしかして お泊り かなー?(ニヤニヤ顔×2』 「えっ、あー、私今さっきまで寝てたから、寝てる間に打ったんじゃないかなー」 引用符まで使ってる文章がどうやって寝ながら打てるのかしらねぇ…。 拳がふるふると震えてる。 「ご、ごめんお姉ちゃん……」 「こなたの家に行ってる、でいいじゃないの……」 「そう言ったんだけど、こなちゃんから電話かかってきちゃってバレちゃった…」 「ウソはつくもんじゃないわね♪」 「うっさい!」 まつりお姉ちゃんはニヤニヤこそ落ち着いてるけど、まだ笑ってた。 「まぁまぁ、つかさがいるトコロで何だし、私の部屋で説教してよー」 「…もういいわよ。疲れた。」 急に脱力感が襲って来た。気疲れかしら? 「あら?珍しい。いつも説教して疲れてるのに。」 「気分じゃなくなったわ。さっきまで衝動的だったし。ちゃっちゃと寝るわ…オヤスミ。」 「あ、うん、おやすみ。」 まつりお姉ちゃんはあっさりと私を見送ってくれた。 部屋に戻ると、私は何をするもなく、携帯をベッドに投げて、私自身もベッドに身投げする。 「……あ、キョンにメールしなくちゃ。」 ピピピ、と寝惚けた頭でメールする。 『今日はありがと。急いで帰ってゴメンね。』と。 送信してから気付いた。絵文字も何も無かったら淡白過ぎる。 上手く頭が回らない。 「そうだ、明日の授業の用意……」 今の私はよくある幽霊かも知れない。 ゆっくりと立ち上がって、学校鞄に明日の授業の用意を入れる。 「こんなもんか…」 ピロリロリ、ピロリロリ。 携帯が鳴った。 「はいはーい」 携帯に返事をする。 送信者は…キョンだった。 「えっと…なに?『感謝するのはコッチだ。機会があったらまた食いたいぜ。』か……」 携帯を待受画面に戻して折り畳み、枕元に置く。 「本当にあんなものでよかったのかしら……でも、嬉しそうだったな……うん。いいか。」 キョンが喜んでくれた。 その妹ちゃんも喜んでくれた。 私が作った料理を。下手だけども。 「……ありがと。」 天井に言葉をぶつけて、私は目蓋を閉じた。
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残暑も収まってきたある秋の日。 私はこなたに一つの提案をした。 「勉強会?」 「そう。いい加減あんたも本腰入れないと危ないわよ。わかってる? 本当は今からだって遅すぎるんだから」 「わかってはいるつもりなんだけどね」 「それじゃダメなのよ。忘れたの?あんた、自分でなんて言ったのか」 「覚えてるよ。忘れるわけないじゃん」 いくらなんでも『あのこと』を忘れてるわけがないか。 もしも忘れていたら、さすがに私でも怒るかもしれない。 高校最後の夏休みが明けたばかりの9月。こなたはこんなことを言った。 ―――私、かがみと同じ大学に行く――― そう言っていた。でも、今現在のこなたの成績では、 私と同じ大学に入ることは正直難しい。たとえ学部が違うとはいってもだ。 だから私は、この勉強会の提案をした。 理由は簡単なことだ。自分の…その、なんだ。 カノジョが自分と同じところに行きたいと言ってくれたことが素直に嬉しくて、 私自身、もっとこいつと一緒にいたいから。できることなら、この先ずっと…。 「それなら結構。明日からあんたの家行くからね」 「ん…わかった。待ってるね」 「覚悟しておきなさいよ。今回ばかりはスパルタでいくからね」 ************** 翌日。 「さて、始める前に一つだけ」 「どうしたの?」 「今日は、私の言うことに絶対に従ってもらうわ。いいわね」 「うん、いいよ。かがみの言うことだもん。ちゃんと守るよ」 「言ったわね。しっかり聞いたからね」 勉強会を始めてしばらくは、こなたも集中してやっていたのだが、 だんだんと集中力が切れてきたのか…。 ―――かがみ。 ―――ねえ、かがみ。 ―――あのさ、かがみ。 本音を言うのであれば、私だって勉強ばかりしていないで、 もっとこなたといろいろなことを話していたい、いろいろなことをしていたい。 でも、今日の勉強会は「こなたとの今」ではなく、 「こなたとの未来」のために開いたものだ。 だから私は、今日この日だけは、容赦なくやろうと思う。 「こなた」 「そろそろ休憩?」 「そんなわけないでしょ。まだ全然進んでないのに」 「だってわかんないんだもん…」 「わからないところは教えてあげるから。 だから、終わるまで休憩はなし。この部屋からも出さないわよ」 「ええ!?それはひどいよ…」 「これもあんたのためよ。私と同じ大学に行ってくれるんでしょ?」 「そうだけど…」 「じゃあ、考え方を変えてみて。自分のためじゃなくて、私のためにがんばって。 そうすれば、このくらいはやれるはずよ」 「自分じゃなくて、かがみのために…」 「私だって、こなたと一緒に同じ大学…通いたいんだからね」 「かがみ…私、がんばるよ」 「その意気よ」 そしてまた集中し始めたこなた。 仮にも進学校である稜桜に受かっているのだ。 しっかり集中してやれば、絶対にいい結果が出るはずだ。 「かがみ、ここって…?」 「ここはね…」 「なるほど」 「やっぱり飲み込みはいいのよね、あんた」 「かがみの教え方が上手なんだよ」 やればできるのに、なんで普段はあんななんだか…疑問で仕方ない。 順調に進んでいってる、再開してしばらく経ったころ。 どうも、こなたの様子がおかしい。というか妙に落ち着きがない。 「こなた?どうかした?」 「…なんでもない」 「なら、いいんだけど」 その時はそう言っていたけど、時間が経つにつれ、 ますます落ち着きがなくなってきた。そのうえ、妙に顔が赤くなってきたような…。 ―――こんなこなたも可愛いわね――― そんなことを思っていたら。 「かがみ…あのさ」 「んー?」 「あの、ちょっと…」 「どうしたのよ?」 「いや、だからね…トイレ…行ってきていい?」 そういうことか。なら、これまでの様子も納得できる。 さて、どうするか―――よし。 「どこまで進んだの?」 「えっと、ここまで」 「まだまだね…なら、終わるまで我慢しなさい」 「え!?」 「さっきも言ったでしょ。終わるまでここから出さないって」 「かがみの鬼…」 「何とでも言いなさい。 今日は私の言うことに従ってもらう。 それにこなたも了承したはずよね?」 「そうは言ったけど…」 「なら、我慢しなさい」 「わかったよ…やってやるさ!」 それからのこなたは正直、凄かった。 今までのペースが嘘かのような勢いで問題を解いていく。 そうして2時間弱。 「終わったー!」 「お疲れ様、いつもこのくらいのペースならいいんだけどね」 「それはともかく、いってくる!」 そして席を立つこなた。しかしまだ行かせるわけにはいかない。 まだやることが残っている。 「待ちなさい」 「何…?ちゃんと終わらせたよ?」 「そうね。けどまだ答え合わせ、してないでしょ」 「そんなの戻ってきてからでいいじゃん…」 「…こなた」 「う…わかったよ。でも、できるだけ早くしてね」 「わかってるわ」 一瞬、真っ赤になりながらもじもじとしているこなたをもっと見ていたいと思ったが、 これ以上引き伸ばしちゃ、さすがに可哀想だからね さて、結果はどうかな…。 ****** 「はい、おっけー」 「もちろん!それじゃ…」 「待って」 急いで立ち上げるこなたを再度呼び止める。 まだ、やり残したことがある。 「まだあるの?」 「ええ、でも何かさせるわけじゃないから安心して。 これはちゃんと言ったことを守れたご褒美」 「…できれば急いでほしいんだけど。いい加減限界が…」 「すぐ済むわ」 そうして、こなたの頬に手を添える。 そして―――。 「こなた、がんばったわね」 「かがみ?…んっ…」 ―――キスをした。 あんなこなたを見てたら我慢ができなくなった、というのも本音。 がんばってたやり遂げたこなたに、ご褒美をあげたくなったのも本音。 そっと舌先で唇を突付くと、応えるようにこなたの舌が私のそれに触れてくれた。 そのまま舌を絡めあい、互いの口内を行き来し続ける。 「かが…み…っ…」 「…んっ…ふぁ…」 ―――どれくらいそうしていたのだろう。 実際はいかほども経ってはいないのだろうが、どちらからともなく、体を離す。 私たちを繋ぐ銀色に輝く細い糸が伸び、そして消えた。 「…はぁっ…ご馳走様、こなた」 「…あっ…」 「こなた?」 腰が抜けてしまったのか、こなたがぺたんと座り込んでしまった。 それと同時に先ほどまでとは、少し違う感じに真っ赤になっていく。 「どうしたのよ?」 「……った」 はっきりは聞き取れなかったが、さっきまでのこなたの状況と、 今の状況を考えてみると、一つの予想が浮かんだ。 「まさか…やっちゃった?」 「そのまさかだよ…かがみの…ばか!」 そしてこなたは、部屋を出て行ってしまった…。 そりゃ怒るわよね…失敗しちゃったな。 ********* シャワーを浴びて戻ってきたこなたは、拗ねた子供のように頬を膨らませていた。 謝らなきゃ…結果的にとはいえ、怒らせるようなことをしちゃったんだし…。 「こなた、ごめんね…」 「……」 「もうあんなこと言わないから、だから」 「……たら」 「え?」 「もう一度、キスしてくれたら、許してあげる」 「…わかった」 今度は、キスだけでは済みそうにない気がした。 済ますつもりもないけどね。 だって、今日という時間は、まだまだ残っているんだから―――。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(^_-)b -- 名無しさん (2023-05-12 10 44 09) こなたカワイイ! かがみのSっけがなんかいい(*´∇`*) -- ハルヒ@ (2008-07-24 08 47 59)
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「おーっすこなた。何見てるの?」 「ロボットアニメだよん」 「へぇー。あんたロボット物好きなの?」 「まあねー。かがみんも一緒に見よう見よう」 「まあ、ちょっと興味あるかも」 「なんだこの狙ったようなドジっ子っぷりは…」 「アニメに真面目に突っ込んだら負けだよ、かがみん。にしても、いきなりパンモロはだめだよね~」 「なんで?嬉しいもんなんじゃないの?」 「甘いよかがみん!チラリズムというものを理解してない!」 「いや、理解できなくていいわ…」 「…こなた。これってロボットアニメよね?」 「うん、そだよー」 「なんだかマリみてみたいな雰囲気なんだけど…」 「キャッチフレーズが『伝記! 百合! メカアクション!』だからね~」 「ごった煮すぎないかそれは…」 「そこはほら、介錯だから!」 「それは…深く考えるなってことなのか…?」 「そういえば百合物で年齢が同じって珍しいよねー」 「あんたそんなに百合物に詳しいのか…? まぁ、百合といえば、『お姉さまー!』って感じよねー」 「あ、でもお嬢様が平凡な女の子を気に入るってう点では似ているか」 「うわ、なんかくさいことを」 「ロボアニメの男は熱くないと」 「そうまが主人公?」 「普通のロボアニメなら、そだねー」 「?」 「ひめこはちかねが大好きなのね」 「普通のロボアニメなら、ひめこもちかねも、そうまが好きって設定になってるね」 「…これは普通のロホアニメじゃないのか…?」 「ちょ…いきなり別アニメかと思ったわ」 「OPが無かったから、テレビでたまたま見た人はびっくりしただろうね~」 「ロボキタコレ!」 「これはかっこいいのか…?」 「…」 「…」 「ちかね…なぜ馬なんだ」 「そこはほら、介錯だから」 「ああそうかい…」 「ひめことちかねは巫女なのね」 「伝記の部分の設定だね。ちょっと自分と重ねたりしてる?かがみん」 「べ、別に…」 「Nice catch.」 「体張ってるわね、ちかね…って顔赤くなってる!」 「つまりはガチだね! ガチ!」 「ふぅん、こんなのがテレビで流れる時代なのね」 「キスキスキス!」 「うわ、マジかよ!私がそうまだったら納得行かねぇ!!」 「これがこのアニメの醍醐味だよ、かがみん。まぁ、やっぱり1話は超展開だなー」 「ギャグアニメだろ…これ。…結局、そうまとひめこがくっつくんでしょ?」 「気になる?気になる?」 「え、ま、まぁ。ちょっとだけだけどね」 「もう、素直じゃないんだからー。DVD貸したげるよー」 「そう言うなら…借りていくわ」 「やあかがみん。DVDどうだった?」 「こなた…」 「かがみ…? あの…その、手に持ってるのは巫女装束…?」 「こなたが好きなの。こなたの瞳が好き。春の銀河のように煌く瞳が。春の陽射しのような やさしい眼差しが好き。こなたの髪が好き。そよ風に閃くシルクのようなさらさらの髪が好き。 元気なアホ毛も好き。こなたの唇」 「えっ、ちょ…」 「こんなままごとは、もううんざり!」 「アッー!」 「かがみ様…私、どうしたらいいのかな」 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-21 22 53 48) 感動したぜ!ウィィ! -- 武藤敬司と石原良純 (2010-01-10 23 10 14)
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私はゆっくり廊下を歩くと、こなたの部屋のドアの前に立った。 (こなた…いるかしら…) そっとドアを開けた。 「すぅ………すぅ…」 ベッドの上で、仰向けになって寝ている。寝息の音を立てるたびにお腹がふくらんだり、へこんだりしている。 邪気のない寝顔、柔らかそうな頬、細い腰つき、きれいな線の脚…。 これは反則だ。私が男だったら間違いなく道を踏み外していた。 (…やれやれ、友達が来るって言うのに) 遅刻した私が言う権利は無いのだけど。 机の上を見ると、DVDのケースが山のように積み上げられている。 (これを一晩で見たというのか…) ここまでやるとは…執念だ。 部屋の隅には、高校で使っていたカバンや教科書、卒業証書の入った筒が無造作に放り投げられ、制服が脱ぎ捨てられている。 (こいつも結構だらしないなぁ…人のことはからかうのに) ふと床を見ると、A4サイズの印刷用紙が落ちているのに気づいた。 (何だろうこれ…?) 『かがみへ この手紙を読んでいるということは、部屋に入って来たということだね。 私は徹夜してしまったので、眠くてしょうがないよ。 とりあえず二、三時間経ったら起きるかもしれないから、適当に漫画でも 読んでいてくれたまへ~。 (=ω=.)』 パソコンで入力された文字が並んでいる。 (何だこれは…しかも最後の顔文字は何だよ。大体、鍵も閉めずに寝るなんて、泥棒が入ったらどうする気だ…) どうやら、家にはこなた以外誰もいないらしい。 つまり、私には泉家の安全を守る義務が出来たという事だ。 うん、間違ってないわよね?文句があるなら今すぐ名乗り出なさい。 「…ふぅ」 部屋にあった漫画を数十冊読み終えた。 小さい頃から読書しているせいか、活字を読むのは結構早い。 文字の少ない漫画だと、ほとんど時間を時間をかけずに読み終えてしまう。 (もっと絵を楽しまなきゃって言いそうだな、こいつは) 家に来てから三時間近く経つが、こなたは全く起きそうにない。 (どうしよう…起こしたほうがいいかな) そっとこなたに顔を近づけた。 (大人しくしてれば、モテそうなんだけどな。まぁ、普通の男じゃ付き合えないか) 恋人 よく考えたら、色恋沙汰は三年間、一切なかった。 別に避けていたわけではないのに。 なぜだろう。気がつけばこなたたちと一緒にいた。 どうしてだろう。楽しかったからだろうか。 本当にそれだけ? こなたは私にとっての何? なんでいつもあんなに世話を焼いたり、学校の外でも一緒だったの? 私の読みたい本なら、近所の本屋でも買えるじゃない。なんでわざわざこなたの趣味に付き合ったの? ただの友達がそこまでするの? 心の中でもう一人の私が、何度も疑問を投げかける。 分かっている。自分の本心は。 こなたとはただの友達で終わりたくない。 もっと深い関係になって、二人だけの時間を過ごしたい。 ちょっとやそっとのことじゃへこまないし、場の空気を和ませてくれるし、甘え上手で愛らしい。 そんなこなたが好きなんだ。 「ん~…」 小さい体がもそもそと動き出し、ゆっくりと起き上がった。 「あ…かがみ…来てたんだ」 「えぇ…お邪魔してるわ」 ぼんやりした様子で、口元から少し垂れているよだれを手で拭った。 「ふぅ…今お茶入れるよ…」 「あ、ありがと…」 よろよろと歩きながら、部屋の外へ出て行った。 「ふあ~ぁ……」 あくびの声がここまで聞こえて来た。どうやら、まだ眠いようだ。 (やっぱり、迷惑だったかな…) 自分の行動を少し後悔した。 「んで、どうしたの?なんか思いつめてるみたいだけど…」 コップのお茶を飲みながら、眠そうな声でこなたが言う。 「…怒らないで聞いてくれる?」 「じゃあ笑いながら聞きましょう」 「…何でもいいわ。とにかく、話したいことがあるの」 「ん…?」 こなたも少し真剣な表情になった。恐らく、私がかなり辛そうな顔をしているのだろう。 「なんかね…ずっと引っかかってたの。自分の中で」 「ふんふん」 吸い込まれそうな目で私を見つめる。駄目だ、もう余計なことなんか考えられない。 「単刀直入に言うわ…」 「ん?」 「こなたが…好きなの」 「……はい?」 「好きなのよ!」 顔と胸が熱い。心臓の動きと音がはっきり分かる。 こなたはただ、呆然とした顔をしていた。 「あんたのこと、ずっと好きだった!今も部屋の壁にプリクラ貼ってるし、あんたが夢の中に出てきたら、それだけで最高の気分だったわ。不器用な私を、ツンデレなんて面白い呼び方で呼んでくれたし…そりゃ、たまに鬱陶しいと思うこともあった。でも私を頼ってくれて本当に嬉しかったのよ!」 「かがみ…」 「昨日、私に抱きついてきたでしょ、あの時、心の中に溜まってたものが一気に噴き出したのよ。夕べからずっと、あんたの事ばかり考えてるの」 「…」 「もうどうしようもないの!こなた、どうすればあんたは振り向いてくれるの!?」 「……」 こなたは何も言わず、ただ私をじっと見つめている。 「ねえ!なんとか言ってよ!」 「…いや、その…動揺しちゃって、何がなんだか」 「私は本気なのよ。お願い、わかって…」 そう言うと私は、こなたに近寄り、肩を鷲づかみにした。 「ちょっと…かがみ……どうしたのさ、ねぇ…んっ」 こなたの唇を、強引に奪った。 柔らかくて、暖かい。 こなたはただ、床に手を着いて、私の体を支えている。 どのくらい、そうしていたかはわからない。ただ、とても長い時間だったような気がする。 私は唇を離すと、黙ってこなたの顔を見た。 ただ、呆然としている。何が起こったのかわからないという顔で。 「かがみ…落ち着いた?」 落ち着いただって? 私は何も、欲望のはけ口としてこなたを見ているわけじゃない。 これじゃ、完全に空振りだ。 自分をを突き動かしていたものが煙のように消えてしまい、空しい気持ちが一気に噴出してきた。 「…ごめん、迷惑だったわよね」 「え…?」 「女同士で…一体何考えてるんだろうね私…」 「…」 「本当にごめんなさい!」 私はそう言うと、こなたの部屋を走って飛び出し、靴紐も結ばずに表へ飛び出した。 こなたの顔を見ることが出来なかった。 すぐにでも、この場から逃げたかった。 「…」 かがみの飲み残しのお茶を眺めながら、私は一人でぼんやりしている。 さっき起こった出来事が何だったのか、全く理解できない。 『好きなのよ!』 この一言がずっと頭の中を駆け巡っている。 一体、どういうことなの。 かがみが私を、友達じゃなくて、恋人として意識していたってこと? 「かがみはさ…私の大切な友達だよ」 卒業式に自分が言ったことは覚えている。かがみは私が今まで出会ってきた中では。一番のよき理解者で、友人だと思っていた。その気持ちは今も変わっていない。 だが…かがみはそれ以上の感情を私に持ってしまったと言う事なのだろうか。 (…一体私は、かがみにとっての何?) 頭が全然働かない。考えがまとまらない。 私は布団に潜り込んだ。 夕飯まで寝てしまおう。そうすれば、気分も晴れるはずだ。 真っ暗な空間、私の周りだけ、薄ら明るい。光源はわからないが。 目の前に、前髪で目が隠れた、青髪の小柄な少女がいる。 『かがみを傷つけちゃったね…』 「え…ちょっと、誰?」 『こなただよ』 「は?何言ってるの?」 『残念だったね、せっかくいい友達が出来たのにね…こんな形で終わっちゃうなんてね…』 「そんな、違う!」 『違わないよ、ありゃ相当ショックだろうねぇ…もう顔合わせられないかもね…』 「そんな…」 『いいじゃない、友達なんかいなくたって生きていけるよ…』 「嫌だ…そんな…」 『あんないい子と一緒に三年間過ごせたんだよ、それだけでも良かったじゃん…』 「…」 『気にすることは無いよ…ゲームやアニメがあれば十分じゃないか…』 「…嫌だ」 『私にはふさわしくなかった、そういうことなんだよ…』 「…やめて」 『これから、ずっと一人ぼっちで…』 「うるさい!!!!!だまれ!!!!!!!!!」 「うわぁ!」 窓から日が差している。 体中、汗でぐっしょり濡れている。喉がカラカラだ。 そして、驚いた顔をしたお父さん。 「こなた…大丈夫か?ずいぶんうなされていたが…」 「あ…ごめん」 「夕べも起こしたんだが、全然起きなくてな。昨日の夕方からずっと寝ていたんだから、よほど疲れていたんだな…」 なんという事だ…。道場に通っていたときも、こんな事はなかったのに。 「ま、とりあえず、ご飯の支度してるから、そろそろ下りて来なさい」 「あぁ…ごめん、そう言えば今日私が作るんだったよね」 「うーん、まぁ、たまにはいいさ。受験勉強の疲れが溜まっていたんだろう。その代わり、この前買ってきた新刊、ちょっと貸してくれないか?」 「え…あれはまだ手をつけてな…」 「いいじゃないか、頼むよ」 うーむ…。なんか、ダメだな…今の私。 とりあえず、汗を洗い落とすために、シャワーを浴びることにした。 風呂場で自分の髪を見ると、そこにはメデューサのような頭の自分がいた。 「うわ…ひどいなコレ、アホ毛ってレベルじゃないよ…」 蛇口をひねってシャワーを出して、体中にお湯をかける。 (うーん、昨日のかがみは一体何だったんだろう……) もっと、気の利いたこと言えばよかったかな。 朝食を済ませると、特にすることも無かったので、部屋に戻って漫画を読むことにした。 (結構お父さんに持っていかれたなぁ…えぇと、コレがいいかな) ………… …………… (やっぱりかがみのことが気になる!!) 11時過ぎ…この時間なら起きているだろう。 携帯電話のボタンを押して、かがみに電話してみた。 呼び出し音がしばらく鳴ると… 「こちらは、N○Tド○モ留守番電話サービスセンターです。合図がありましたら…」 (どうしたんだろう、あの真面目なかがみが…まさか今日も朝寝か) 発信音が鳴ると、用件を話した。 「もしもし、なんか昨日は色々あったけど。とりあえずコレ聞いたら連絡くださーい」 これでいいはずだ。きっと、何らかのアクションがあるはず…。 お昼過ぎになった。 まだ何も言って来ない、メールもない。 さすがにちょっと心配になった。 (かがみが気づかないとは思えないんだけどな…う~ん、つかさに聞いてみるか) つかさの携帯電話にかけてみると、また呼び出し音の後に留守電のサービスセンターに繋がった。 「あ、つかさ、ちょっとかがみに用があるんだけど電話出ないから、私から電話あったって伝えといてくれないかな?よろしくー」 (つかさもか…どうしたんだろう) (まさか…私を避けてるんじゃ) 不安が胸をよぎった。 ベッドの上に寝転び、天井をぼんやり眺めた。 (私って、一体どういう人間と思われてたのかな…) 初めて世間体というものを気にしてみた。 どのくらい経っただろうか、携帯電話の着信音が鳴った。 (ん?メール??) From:つかさ Subject:やっほー☆ 遅れてごめーん。今お菓子作ってて、手が離せないんだ。 お姉ちゃんはさっき出かけたよ。 ケータイ忘れてったみたい。帰って来たら、電話するように伝えておくよ。 (良かった…) どうやら、特に変わったことが起きたわけではなさそうだ。 (…オンラインゲームでもやるか) PCの電源を入れて、起動させた。 (あ、そう言えば…キス…したんだ) ギャルゲーやネットでそういうシーンは見慣れているが、現実に自分が経験するとは思わなかった。 (かがみの唇、やわらかかったな…あぁ、なんか、結構大胆なことしちゃったな昨日…かがみって理性崩壊するの早すぎ!!!) 今になって急にドキドキしてきた。 (友達と思ってたら、いきなりキスですよ…すごいことだよコレ、てか私、別に罪の意識持たなくていいんじゃないか…変な夢見たせいだな) 少しずつ冷静になってきた。そうだ、よく考えれば、寝ているときにいきなりやって来て、キスまでしていくなんて…ギャルゲーでも無かった気がする。 (うーん…でも、嫌じゃないな、何でだろう…もう一回してほしいかも…) 色々と考えていると、夕方になっていることに気づいた。 (あ、もうこんな時間だ、夕飯の支度しなきゃ) PCの電源を切ると、台所へ向かった。 その夜、かがみから電話が来た。 「もしもし、こなた…」 「やふー、元気にしてるかい?」 「…うん、あの、昨日はごめんね、いきなり変なことしちゃって」 「気にしない気にしない、別に怒ってないし。大丈夫だよ」 「え、ホントに…?」 「いつものかがみんらしくないぞ~、あのツンデレっぷりが好きなんだけどなぁ」 「う…やっぱり、はっきり言われると恥ずかしいかも…」 「おぉう、デレデレのかがみ様~~~」 「う…うぅ…」 「ところで、明日私に付き合ってくれないかい?」 「え?いいけど…」 「よしよし、それじゃあ、アキバに10時集合ね」 「やっぱりそこか…」 「当然~~♪」 「…ったく、あんたからオタクを取ったら何が残るのかしらね」 いつものかがみに戻ってきた。これでいい、かがみはこうでなくちゃ。 「そういうことでよろしく頼むよ。」 「はいよー、寝坊するんじゃないわよ」 「ほほう…人のこと言えるのかな?」 「う…わ、わかってるわよ!ちゃんと行くわ!」 その後も、色々と話して、電話を切った。 明日が楽しみだ…。 終わりと始まりの間に(続き)へ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-02-16 20 55 41)
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「小さい頃にさ、ままごとってやったよね?」 こなたの口から突拍子の無い発言が出たのは、昼食を済ませた後の昼休みのことだった。 「何よ、いきなり?」 「昨日、ゆーちゃんと話してたんだ。小さい頃はよく一緒に遊んでたねって」 こなたは思い出すように身振り手振りを使いながら話している。 「ふーん、それでままごとが出たってワケね」 「そうなのだよ。私もネトゲばっかりしてたわけじゃなかったんだねー」 「そんな小さい時からネトゲ漬けだったら、もう色々終わりだろ…」 今でも終わりかけているとは口に出さずに、私はこなたの話を聞き続ける。 「でね、思ったんだけど…今の私達でままごとをするとすれば、誰がどの役にピッタリかなって」 「なんかいきなり話が飛躍したな…」 不満そうな返事をしながらも、何となく頭で考えてみる。こなた、つかさ、みゆき、私の四人でままごとか…。 「みゆきさんはどんなのにする?」 「そうですね、私なら…」 みゆきは少しズレかかった眼鏡を上げ、聖人の微笑みで答えた。 「泉さんとつかささん、私とかがみさんが夫婦なんてどうでしょう?」 「んなっ!?」 「私と…こなちゃん?」 「おぉ!?み、みゆきさんにしては何だか意外だ…」 こなたの意見に激しく同意せざるをえない。 まさかみゆきがつかさとこなたを応援してたなんて。それに、みゆき…私のことをっ? 「ちなみに夫役は泉さんと私。更に泉さんとかがみさんの、私とつかささんは幼馴染設定です」 私の動揺を無視して、新たな設定が上乗せされていく。こなたはいつも眠そうな目を見開き、つかさは唖然としながらそれを聞いている。 「どちらの夫婦も、親からの強要により愛の無い結婚をしてしまいます。その為泉さんはかがみさんを、私はつかささんを、本当に好きな人を強く求めてしまいます。たった一人、愛すべき人を…」 えっと…誰かこの子を止めるべきではありませんか?明らかに昼メロの見すぎだろ。そんな私の思いは虚しく、みゆきは楽しそうに話を続ける。 「それぞれの想いが溢れ出した時、遂に夫達は妻ではなく…ずっと想い続けていた幼馴染と一夜を過ごしてしまう。この一夜を忘れることなく生きていこうと心に決めながら…」 話は更にエスカレートしている、こなたは少し顔を引き攣らせながら、つかさは顔を赤くしながらモジモジしている。 「そこで終わっていれば良かったものの、神からの罰なのか…そのことがお互いにの家庭にバレてしまい………という愛憎劇はどうでしょう?」 「………」 「………」 「あは、あはは…」 私もつかさも…何も言えなかった。こなただけが辛うじて、渇いた笑い声を上げている。 「実はこの話はまだ続「つかさは、どんな配役がいいと思う?」 「へっ!?わ、私ー?」 ナイスタイミングこなた。みゆきには悪いけど、それ以上はもう語らせまい。だって…あまりの刺激につかさが倒れるから。 みゆきは少し残念そうな顔をしながら、つかさを見ていた。 「私は…みんな仲良く一緒に暮らしていけたらいいなぁって思うよ」 周りの人まで幸せにしそうな表情で、つかさは最高の言葉を言った。 「うんうん、やっぱりつかさは良い子だ…」 「尊敬します、つかささん…」 こなたとみゆきも大絶賛。さすがはつかさ。四人の平和の象徴は間違いなくあんたよ。感慨深くしみじみしていると、こなたは次に私の方を向いた。 「ねーねー、かがみんはどんな配役にする?」 「わ、私!?」 「うん、どんな配役にしたい?」 「そうね、私なら…」 頭の中で一つの光景を思い浮かべてみる。 一つ屋根の下に私と…。 ―――。 仕事帰り、私は疲れた身体を引きずりながら愛する妻が待つ家へと向かう。 その手には妻の大好物のチョココロネを下げながら。 『かがみ、おかえりー』 『ただいま、こなた』 学生の頃から相変わらずの小さな身体と長い蒼髪に不釣り合いな、少し大人っぽいエプロン姿。 ああ、なんて可愛い嫁なんだ…。 『先にご飯にする?それともお風呂?』 質問の度、首を左右に傾けながら尋ねてくる。 『えっと、今日はご飯にしようかなー』 『分かった!それじゃあ用意するから待っててね』 私の返事を聞くと、一つ柔らかな笑顔を見せてリビングの方へと走って行った。私はこなたが用意を済ませる間に、服をスーツを着崩し少し楽な格好になる。 そのままテーブルに座り、こなたが来るのを待つ。 『用意出来たよー!』 『こなた、チョココロネ買ってきたから……って!?』 振り返り返事を返そうとしたが、目の前の驚くべき姿のこなたを見た途端、私は息が止まりそうになった。 『こっ、こなた!?その格好は一体…』 『えへへ…』 何と言うか…その容姿からは想像も出来ない、セクシーな下着のみを身につけたこなたが私の前に立っているのだ。 恥ずかしそうに頬をかく姿が、私をより一層呼吸難に陥れる。 『今日のご飯は…私だよ、かがみん』 『………うぁ…』 こなたはとびっきりの笑顔を見せる。私は口をパクパクとしながら辛うじて息をしている。顔が熱いし言葉も出ない。頭が考えることを止めている感じだ。 『こ、これは流石に…ダメだったかなぁ…』 私の反応に悪気を感じたのか、こなたはしょんぼりしながら言葉を濁している。 『………』 『かがみ…』 今にも泣きそうになりながら、細々と私の名前を呼んでくる。 ああ…もう無理、これは限界だ。 『全く…こんな大好物を目の前にして、食べずになんていられないわよっ!』 『え?』 床は冷たいフローリングだったが、私はそんなことを気にせず、彼女を押し倒した。 こなたは少し驚いているようだったが、それ以上に何かを期待するような眼差しを私に向けている。 『かがみぃ…』 『こなた…』 こなたを見つめる視界の端に、先ほど買って来たコロネが見えた。その瞬間、私の心にほんの少しだけ、悪戯心が芽生える。 『ねぇ…こなた。あんたの好きなコロネ買って来たから、今から食べるわよね?』 『え…?』 私の言葉に、こなたはムッと顔をしかめ始める。 その表情を見た私は、更に追い打ちをかけるためにこなたの上から退こうと身体を上げる。 …が、それは私の腕をつかむ小さな手によって止められた。 『コロネなんかいらない!それよりかがみがいいんだもん!』 涙目になりながら必死に訴えてくる様子を見ると、ちょっと焦らし過ぎたか?と思ってしまう。 声には出さず心の中で謝罪をし、出来る限り優しい微笑みをこなた向ける。 『ふふふ、嘘よ。私も…こなたが1番だからね』 その言葉を聞いた途端、こなたのしかめっ面はすぐに崩れ、変わりにとても嬉しそうな笑みを浮かべた。私はそんな可愛い彼女を抱き寄せ、額に一つキスを落とした。 『大好きだよ、かがみ』 『私も…好きよ、こなた』 ―――。 「ちょっと、かがみん!話聞いてる?」 「へっ!?ほ、ホントに食べていいの?」 私の偽り無き本音に、三人は不思議そうな顔をしている。 「…かがみ、お昼食べ足りなかったの?」 「お姉ちゃん、何か買ってこようか?」 「私も着いて行きますよ、つかささん」 ああ、今のは妄想なのね。それも飛び切り素敵な…。これじゃあみゆきのこと言えないじゃない。全く…自分の脳内クオリティの高さに、良い意味で涙が出そうだ。 「べ、別にそんなんじゃないわよ!」 「じゃあどうしたのさ?」 私の思いを無視して、こなたはしつこく同じことを問い詰めてくる。 言えるワケないでしょ、あんたとの新婚生活をシミュレーションしてたなんて…。 「も、もう…何でも良いじゃない!そーゆーあんたはどうなのよ?」 「私?私は…」 こなたに話を振ることにより、私はどうにか尋問から逃げることが出来た。 いや、ただ話を逸らす為だけに話を振ったワケじゃないんだけど。だって私のことなんかより…こなたの意見が聞いてみたいから。 「んー…まぁお父さんは私で決まりかな?」 「こなちゃんがお父さんかー」 よし、夫役は大丈夫。こなたはきっと選んでくれるわよね。私だけがあんな妄想してるなんて…惨め過ぎるもの。 「それと…お母さんはかがみ!」 「…っ!」 よし、やっぱりきた!想定の範囲内の解答に、小さくガッツポーズを決めようとしたら… 「それにつかさとみゆきさん!」 「へっ…!?」 あれ?幻聴が聞こえたような…。つかさとみゆき…何それ美味しいの? 「一人なんて選び切れないよ。だからみんな私の嫁に決まりー!」 この言葉に意識を取り戻す。…開いた口が塞がらないとはまさにこのことか。 ガッツポーズを決めるハズだった腕はダラリと落ちてしまった。 「あれ?どうしたの、かがみ?」 「………」 酷いよ、こなた…。 私達付き合ってるんだから………。 例えばの話でも… 遊びの話でも… 「ばか…」 「ふぇ?」 こなたは私だけのこなたじゃなきゃイヤなのっ!! 「こなたの…バカァァァァァ!!!!」 「の、のわっ!!かがみん?どこ行くのさー!?」 ―――。 こうして私はこなたのもとを去り、再び妄想の中へ…ってのはなかったけど。 こなたは後でちゃんと謝ってくれたし、それに…夜には妄想が現実になったから大満足! あ、これはまた別のお話になるんだけどね… おわり。 コメントフォーム 名前 コメント みゆきワールド…じゃなかったかがみワールドだわこれ -- うに5 (2014-05-14 21 49 28) かがみワールドすげwww -- 白夜 (2009-10-20 20 33 37)
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見つけた記念に。かがみの頬をさりげなくツンするこなた。いいなあこの二人 -- とと (2008-08-25 06 39 15) これはいいこなかが!GJ! -- 名無しさん (2008-08-25 12 25 58) うむ、この無邪気な -- 名無しさん (2008-08-25 20 07 50) ところが、可愛らしいw -- 名無しさん (2008-08-25 20 08 10) これはいいこなかがですね -- 名無しさん (2008-08-29 16 02 57) GJ!かわいいね。 -- 名無しさん (2008-08-30 15 24 35) 名前 コメント
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◆各作品のあらすじ有.verはこちら 1-63氏 かが×こな前編 (鬱要素/救済あり) かが×こな後編 (鬱要素/救済あり) …もしも、こなたが原作版と入れ替わったら? 前編 …もしも、こなたが原作版と入れ替わったら? 後編 1-80氏 無題 1-166氏 お見舞い 誕生日 耳 夏の日の思い出 1-176氏 催眠術 無題 1-316氏 かがみが残してくれたもの(前編)(死人あり・鬱/救済あり) かがみが残してくれたもの(後編)(↑の続き) 卒業したら・・・ 1-472氏 万引き(いじめ/多少救済あり) 二人だけの空間 さんにんきりでなにしてる 1-500氏 1巻86p『秘密の小箱』より 3巻47p『広く狭い』より ラストサマー・ホリデー(夏の終わり) 夜更けに降る雨 1-636氏 かがみの誕生日 1-651氏 初デート 小なたまとめ その1 その2 その3
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『みゆきさんを着せ替え隊・前編』 ──ハロウィンと誕生日と仮装パーティと── ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― いつもの学校帰り、いつもの気の合う四人組で歩く道に、いったいどこから飛ばされてきたのか、茶色に変色した枯れ葉が何枚も風に舞っていた。その光景に、かがみはなんとなく晩秋の気配を感じてしまう。暦はすでに十月も後半。センター試験までは残すところ三ヶ月ほどである。 「でさ、『ハロウィン』といったら仮装だよね」 「また唐突だな」 妙なタイミングで妙な話をこなたが振ってきた、とかがみは思う。 「幽霊、魔女、コウモリ、黒猫、ゴブリン、バンシー、ゾンビ、魔神、それにドラキュラやフランケンシュタインの怪物。うーーん、まさに乙女の夢だよね」 「ずいぶんとイヤな乙女の夢だな。いたずらっ子の夢の間違いじゃないのか?」 「あ、それ知ってる~。確か『お菓子を持った子どもはいねが~』とか言いながら怪物が東京タワーに卵産んだりして、それをウェディングドレスを身にまとった女子中学生が『愛の天罰、落とさせて頂きます!』って叫んで退治する……奴だよ、ね?」 「つかさ、それ色々と混ざりすぎ」 「はうぅ」 的確なかがみのツッコミに、たった一撃でつかさは轟沈する。 「……まあ、『ハロウィン』といったら仮装だよね」 「そこからやり直すのかよっ」 脱力したかがみは、ニコニコと微笑みながら状況を傍観していたみゆきに助けを求めた。 「みゆき、二人にハロウィンのこと、教えてあげて」 「そうですね。もともとハロウィンは、ケルト人の行事が由来になっているそうです。彼らのカレンダーでは一年の終りは十月三一日で、この夜は死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると信じられていたそうです。これらから身を守る為に仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いていた。これが今のハロウィンでも行われるカボチャのランタンとか、仮装になっているんですね」 「……とにかく、『ハロウィン』といったら仮装だよね」 「お前、他人の話を聞く気ゼロだろ」 心底呆れ返ったかがみが糸目でツッコむ。無論こなたはそれを華麗にスルー。 「というわけで、今度の日曜に衣装合わせしたいから、私の家に十時に集合ってことで。特にみゆきさんは絶対着てね……じゃなくて来てね」 「いやそんな、書き文字でないとわからない駄洒落を織り込まれても反応に困るんだけど。まあとにかく、話はわかったわ。今度の日曜十時にこなたの家に集合ね。でも、服とかはどうするのよ」 「むふふふ、そこはそれ。その道のスペシャリストであるこの私に、全てまかせたまへ~」 「まあ、なんだかワクワクしてきますね。今度の日曜が楽しみです」 「そうか? 私は逆に行く気が失せて来るんだが……」 いかにも楽しげなみゆきの態度をみて、なぜか意味もなく不安を覚えるかがみだった。 ◇ 糟日部の駅でみゆきと別れた後、三人は電車の中でなおも不毛な打ち合わせを続けていた。 「で、とりあえず話は合わせておいたけど、ほんとにあれでいいの?」 「ハロウィンの衣装合わせを名目に、みゆきさんの誕生パーティをサプライズ。いや~、我ながら完璧な計画だよ。しかもみんなのコスプレ姿まで拝めるし」 「どうも邪な考えが混じってるような気がするんだが。ほんとに大丈夫なんだろうな」 ジト目でかがみがこなたを睨みつける。当然、その程度でひるむこなたではない。 「いや~、どーもみゆきさんは、みんなの前で構えすぎる傾向があるじゃん? だからたまには、我を忘れてはっちゃけることも必要だって教えたいんだよ。それにはコスプ……仮装が一番というわけ。わかったかね、かがみんや」 「なんか微妙に本音がにじみ出てたような気もするけど……まあ、確かに一理なくもないわね。わかった、今回だけは話に乗ってあげる」 「ねえこなちゃん。私にも何か手伝えること、あるかな?」 「そだね~。つかさは少し早めに来て、料理作るの手伝ってくれると嬉しいな」 「うん、わかった」 満面の笑みを浮かべてつかさがうなずく。それを横目に見ながら、やや疲れた様子のかがみが再び口を開いた。 「しかたがない、じゃあ私たちは九時くらいに行くとするか」 「あ、別にかがみは遅くてもいいから」 「なんでよ」 「だって料理じゃかがみは戦力外だし。つまみ食いなんかしたくなったら困るでしょ」 「悪かったな、戦力外で。どうせ家事、苦手だよっ!」 なにもそこまで言うことないじゃない、と微妙に傷ついたかがみだった。 みゆきさんを着せ替え隊・中篇へ続く コメントフォーム 名前 コメント
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「・・・寒いわね。」 「だってこんな暗くなっちゃったしね。それに今日は今年1番の寒さらしいよ。」 「あんたがゲマズとかに寄り道したのが悪いんだからね!」 「でも、かがみもついてきてくれたじゃん。」 「う、うるさい!」 太陽の支配はもう終わり、今、この世界を支配しているのは暗闇と月明かりと身に染みる寒さ。 私も、隣にいるかがみも体を震わせる。やっぱり、かがみに悪いことしちゃったな・・・ ただ一緒にいたくて、もっと傍にいたくて、それだけだったのに。 卒業まであと、わずか。だから欲張っちゃった。かがみとの思い出がもっと欲しくなって。 「風がないからまだいいけど・・・こなたは平気?」 「私は大丈夫だよ。頑丈だからね。」 「なら良かった。」 そう、その笑顔。あと何回、貴女は私にその笑顔をくれるの? そう考えると寒さが気にならない切なさが私を襲う。心臓を縛られているような感覚。 言いたい。でも言えない。答えは分かってるから。だからしまっておこう。 大好きだよ、かがみ。 「ううー・・・でも寒いに変わりないわね。何かあったかいのないかな?」 確かバックの中に私の手袋が・・・ 確かバックの中に未開封のホッカイロが・・・ 確かバックの中に飲みかけのお茶が・・・ 10ー79present かがみが大好きなこなたになって、選択肢3つの中から1つ、好きなのを選んで下さい。 選んだら選択肢の前にあるレスへ飛んじゃってください。どんな結果になっても私を恨まないで下さいorz ではでは、ごゆっくりどうぞ。 コメントフォーム 名前 コメント 選択型はこなかがスレでは珍しいから凄い新鮮ですね -- 名無しさん (2023-01-04 23 55 23) ↓↑が作者の本気な感じがした、↑もいいな -- 名無しさん (2011-05-14 06 27 26) 全部ハッピーエンドじゃねーかwww 俺も萌やされたらしい もっとこなかが成分を出せるよう精進いたします。 -- naniw (2008-07-04 21 57 33) 手が冷たい人は心があたたかいってのはホントだったのね -- 名無しさん (2008-02-05 00 39 19) どうやら俺は萌やされてしまったらしい。 -- 名無しさん (2008-02-03 04 01 46)